エッセイ集
「オシャレで口合のよいパン」、「繭と絹糸」、「教授室の魔女」など。
トポロジーと心理学
天秤が量るのは重さだけではない。生前の悪行(十王讃歎鈔、死者の書)、正と邪(女神テミス)、魔女の資質(魔女裁判)もはかるのである。いつの日か、我々は閻魔大王によって自分たちの罪を裁かれる。……
現成公案の風性常住について
論文は推理小説ではないのだから、最初に種明かしをしなさいと大学では教えられる。話を結論から始めることは論文を書く基本的な技術の一つであり、科学の世界では常識である。ところが、科学という学問もなかった八百年の昔、猫またというもののけが夜な夜な人を襲っていた時分に、こういう現代的な筆づかいで哲学書を著した人物がいた。……
英語の比較構文に潜むユークリッド空間
本稿は江川泰一郎著の英文法解説(金子書房)の読書感想文である。入門編はこちら。
I. 比較の原理
本章Iは典型的な人間のことば――数学(集合論)、プログラミング言語(C++)、英語――における比較の表現を取り上げ、これらが同じ論理形式(要素、尺度、関係)に従っていることを例証する。この方法論にしたがえば、クジラの公式(クジラ構文)は自然に解釈できる。
II.ユークリッド空間における比較
Kazuo IshiguroのThe remains of the dayの中の文章
it (the house) was taller than it was broad ―その家は幅より、高さがあった(拙訳)。
は、尺度tallerをもって家の「高さ」と何の「高さ」を比べているのか?