語呂合わせというと、「富士山ろくオウム鳴く」を「二二三六零六七九」にこじつけることを思い起こすでしょう。ところで、語呂(合わせ)とは、地口(じぐち)とか口合(くちあい)とも言って、よく似た音声をもつ言葉から、意味の全く異なった滑稽な句を作る遊びのことです。「猫に小判」を「下戸にご飯」、「一つ積んでは父のため」を「一つ脱いでは質の種」の類です。このような言葉遊びを英語ではpunと言いますが、その語義はほんの少し違います。punは二つ以上の意味をもつ一つの言葉、あるいは、発音は同じであるが異なった意味をもつ複数の言葉を使ったオシャレな遊びのことです。次に、言葉遊びを紹介します。
(1)
食事を始める際の挨拶「いただきます」は「食う」「飲む」の謙譲語である「いただく」に由来しますから、日本人はこの挨拶に違和感を覚えることはありません。しかし、日本語をまったく知らない外国人には、この発音は耳慣れないものでしょう。幸運なことに、これを覚えるためのよい語呂合わせがあります。彼らに「かわいいネズミを召し上がれ」を英語で言えばよろしいと教えましょう。すると、彼らは「いただきマウス」と発音します。
かわいいネズミを召し上がれ→(英訳)Eat a ducky mouse. →(発音)イタダキマウス。
(2)
ダンベルは二十センチメートル長くらいの棒の両端に鉄のおもりがついている筋トレ用品です。それを腹の前に持ち、肩の高さまで肘を曲げて持ち上げれば、上腕二頭筋、いわゆる力こぶが鍛えられ、肩の上方に持って肘をまっすぐに上に伸ばせば上腕三頭筋が鍛えられます。ダンベルは「鉄アレイ」とも呼ばれていますので、これらの語源についてお話しします。
中世のヨーロッパ、ある田舎町に、ベルという若者が住んでいました。彼は美声の持ち主であり、また、ヘラクレスのような姿かたちに恵まれたという幸運によって、教会で信者のために讃美歌を歌う機会を与えられていたのです。彼の主人である青年貴族も体を鍛えることが大好きだったのですが、ベル君の体躯、器量、歌声を妬ましく思っていました。ある日、ベル君が歌いながらトレーニングをしていたのを目撃した青年貴族は、精神が散漫である、騒がしいと言って、ベル君の舌を抜くように家僕に命じたのです。それ以来、ベル君はだんまりとなり、「だんまりベル」君、略して「だんベル」君と呼ばれるようになりました。「だんまりベル」を漢字で書くと「唖鈴」となるので、「ダンベル」を「アレイ」というのです。なお、アレイは最近では亜鈴と綴ります。
「だんまりベル君の話」はダンベルの語源のパロディーです。もともとは、内部の舌(ぜつ)を外して音が出ない(dumb)ようにした教会の鐘(bell)がダンベル(dumbbell)であり、中世の貴族はこれの緒を引っ張って腕の筋肉を鍛錬していたのです。
(3)
ビンボーガールと日本語で言うと、それは貧乏女のことですが、英語のbimbo girl(またはbimbo)はセクシーだが頭が悪い女を意味します。何方にしても、この言葉を使うときには注意がいります。
令和二年二月二十一日